2310人が本棚に入れています
本棚に追加
龍と階段を上がって、部屋に入ると、勧められるままにソファーに座った。
「柚。どうした?」
「え?どうもしない」
ぐっと向き合うように、斜めに座った龍に捕まる。
大きな足の間に私の足が挟まれて、逃げられない。
「車で待ってることないじゃん。車で、なんか、考え込んでたし。俺、どれくらいかかるかもわかんないのに」
「あぁ。でも、龍、もうすぐ終わるってかんじだった」
「もっと俺が遅かったら、ずっと車にいたの?夜のコンビニの前で?」
じっと目を見られて、誤魔化せなくなる。
「うんん、そろそろ、どうしようかなって思ってた」
「なんで? 鍵、あったじゃん? あ、ほら、これ、持っとけ」
テーブルに腕を伸ばすと、さっき郵便入れから取り出したスペアキーを渡してきた。
あ。
合い鍵。
……困る。
「いいよ、龍がいる時しか、来ないし」
なんか、焦ってきた。
普通、彼女なら喜んで飛び上がるべきところ、渋い私の返事に、眉をひそめている。
「もっとけばいい。今日みたいな日があるかもじゃん」
どうしよう。
心臓が、妙にドキドキしてきた。
駄目だ。
怖い。
最初のコメントを投稿しよう!