傷を舐める

14/19
前へ
/596ページ
次へ
「柚?」 「龍、要らない。それは、まだ要らない」 喉が締まってしまう。 喜ぶはずのところで、拒絶している私に龍が困っているのはわかるのに、声が上ずった。 龍を傷つけたくはない。 「ごめん。龍。あのね、ちょっと、なんか、そわそわするの」 「そわそわ?」 「ざわざわ?かな。龍がいないのに、上がるのは、ちょっと、苦手」 まだ私の言っていることはわからないらしく、怒っているのか、困っているようでいる。 どこまで戻って話せばいいのか。 一度、あの事は、私の誤解だったと、説明されている。 龍は悪くなかった。 ただ、あの時の事が、あんまりに衝撃で、理由の分かった今も、一人で、この人の帰りを待つのは、妙に怖い。 「一人で俺の部屋にいるの、変な感じがするってこと?」 「あのね」
/596ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2310人が本棚に入れています
本棚に追加