傷を舐める

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いつまでこだわっているんだと言われそうで、怖い。 こだわってない、はずなのに、嫌なのだ。 「あのさ、龍の二十歳のお誕生日の時、私、ちょっと動揺しすぎて、すごく嫌だったの」 「うん」 「もう、勘違いって、わかったけど」 「ん」 「あの時さ、強烈だったんだよね。ショックが。……もう分かってるんだけど、勘違いだったって。でも、一人で龍の部屋で待つのか、と思うと、なんか、妙にそわそわする」 「ああ。」 そう短く返事すると、龍之介はすこし悲しそうに考え込んでいた。 「ごめんね。昔の事」 「ん、いい」 ちょっと考えると、私の手を撫でた。 「柚さ、俺に言いたいこと、あったんじゃない? 俺が、誤解だって、説明する前。俺、ちゃんと聞いてなかったな」 「え?」 「付き合う前に、誤解だって、俺が言ったから、じゃあそれでいいって話、終わったじゃん。柚、あの時、どうだったかちゃんと聞いてなかったなとおもって。怒ってたんだろ?」
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