家へ

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「柚。俺、誰が死んだって、柚だけは助かってくれって思う。酷いけど、そう思うよ」 「うん」 それは私も同じだ。 「でも、柚が子供を放っておけなかったのも分かる。先生だしってのも分かる。仕事の事、昨日、変な事言って悪かった」 抱きしめられたままで、耳の上から、龍の低い声が響く。 「うん」 「ただ、さあ。柚になんかあったら、俺、まじで駄目だから」 「うん。私だって、一緒だよ。龍がいつもお仕事で頑張ってるの、頑張ってって思ってるけど、いざとなったら、龍だけでも無事ですように、って思う。龍になにかあったら、私、駄目だよ」 ぎゅーと抱きしめた。 「ん。死なないように、気を付けます」 「気をつけるんじゃなくって、龍は、絶対、死なない約束でしょう?」 「あー。そう。俺、そんな事、言ったかな」 高校のころの自分のスピーチを思い出したのか、くすっと笑った。 「なぁ、柚」 優しく目を見つめる龍に、ドキッとする。 キスするかな? と思ったら、龍はただ手を伸ばして私の頬をそっと撫でた。 「柚さあ。前に、何で俺がこの時計してんのか?って聞いたよな?」 あ。 二十歳の時、龍之介に渡そうとして、置き去りにした時計。 「うん」 「理由、くだんないけど、知りたい?」
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