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「……誰も言わないけど、さっきの演奏、今までで一番良かったよね」
……あ。言われてみれば。
「私もちゃんと律歌に合わせられたし、音葉ちゃんのソロも上手だったよね」
「うちはドラム自体の音がデカくて分からんかったな」
パッと目を開ける志音。
「確かに。レッスンで言われたこと、ほとんどできてたような」
なんか無我夢中で、余計なことを考えずに吹いてたよね。
「うん、そうかもね。いつもみたいに『よし、ソロだ!』って思わなかった」
「伸び伸びとしてる方がええんちゃう?」
「伸び伸びかー。レッスンの時は難しそうだね」
ということは、レッスンで先生から言われたことを、体が覚えるまで練習しろってこと?
……うわぁ。
明らかにどんよりと暗くなった私を見て、スナップをきかせてスパンと私の背中を叩く律歌。ホント痛いって。
「うちもまだまだやからなぁ。せいぜい、みんなを引っ張れるくらいまでにはならんと」
さっきはうまくいったとしても、また同じようにうまくいかせるには、今の私たちではできないことだろう。
もっと練習しないと。私がGROSKを引っぱるんだ。
私の指に銃の感触が戻ってきていた。一つの成功体験が刻まれる。
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