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「冗談じゃないよ?」
聞いたことのない、ヒロの落ち着いた低い声。
「え?」
「俺はシンリさんが好きです」
驚いて見上げた表情は、少しも笑ってない。起きてる間はいつもニコニコヘラヘラしてる、表情豊かなヒロが。
「……」
何か返してやらなきゃと思うけど、びっくりしすぎて言葉が一つも浮かんで来ない。
「やだなぁ、何で俺が好きですって言っただけで、鳥に豆まきしたみたいな顔するの!」
「それを言うなら鳩に豆鉄砲だろ」
ああ、やっぱりただのバカだった。ほっとして、笑ってツッコむ。
「何でもいいや。信じてくれた?」
「信じるかよ」
ははっと笑ってコーヒーを飲み、仕事に戻るべくパソコンの画面を覗き込む。と、かけていた眼鏡を横から取り上げられた。
「こら」
「信じてくれなきゃ」
「くれなきゃ?」
涼しい顔で、目の前のペンスタンドに置いてあった予備の眼鏡を取ってかける。別に一つ持っていかれたからって、俺は何も困らない。
「……お返しします……」
ヒロは素直に眼鏡を俺の手元に置いた。
「あーあ、何で信じてくれないのかな」
「軽いからだよ。チャラいし」
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