4人が本棚に入れています
本棚に追加
こいつが食いさがるから何となく会話してるだけで、前向きじゃない。空気が読めるこいつなら、それはわかるだろう。わかったなら、その話はここまでにしてくれ。物分りはいいんだから。
「もう一回言わせて」
何だ? 俺が仕事してんのはわかってるはずなのに、まだ引っ張るのか。邪魔するな、って空気感は出てるはずだろ。
「シンリさんが好き」
ああもうめんどくさいな。つい、返事が滞る。あんまりうるさいなら、明日から遊びに来るなって言わないと。
「俺はシンリさんを抱きしめたいし、キスしたいし、エッチしたい」
俺は別に望んでないよ、それ。そう思うのは勝手だけど。
「一緒に美味しい物食べたいし、映画とか見たいし、ドライブとか連れてってあげたいし、お酒呑みたいし、踊りたいし」
「ヒロ」
名前を呼ぶと、次々と願望を垂れ流してた口が閉じる。
「俺は仕事中だ」
「……うん」
しおらしいな。素直なのはいいところだ。
「黙んないと出禁にする」
俺のことが好きなら嫌だろ、それ。
「えっ……じゃあ、一つだけ答えてよ」
「何だよ」
付き合うのか付き合わないか、の返事か。付き合わないってもう言ったのに。
最初のコメントを投稿しよう!