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「俺はシンリさんが好き」 「で?」 「付き合ってくれるまで口説かせて」  つい、手を止めてヒロの顔を見る。真顔でやがる。付き合ってくれって懇願するんじゃなくて、あくまでも俺がその気になるまで自力で口説きたいのか。  あまりに深刻そうな表情を見て、つい吹き出してしまった。 「何で笑うのー」  そういうことなら、別にいい。俺を口説くかどうかはこいつの自由なんだし、俺に惚れるなって禁じる事なんか出来ない。そして、どう答えるかの選択肢は俺にある。 「いや、いい心意気だと思って」  相手が俺自身だってことを除けば、諦めずに惚れた相手を口説こうって努力する姿勢っていいもんだよ。これは若さだ……って、ほんとに俺、おっさんだわ。 「シンリさんをさ、俺は守ってあげたい」  キリッと表情を引きしめて、キメ顔で決めゼリフのつもりだな。 「いや、守られるいわれはないんだけど」 「う……」 「俺、別に敵も悩みもないし、家も貯金もあるし保険にも入ってる」 「そ……そうなんだ……」  ヒロは両手をデスクについて、がっくりと肩を落とす。 「……えーと、ほら、将来的に? 地震とか台風とか? あー、ほら、強盗とか……」
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