GAME

「当たり前だろ。あっちはデカい金動かしてるんだ。俺程度に指名でオーダーはないよ」
「だーよねー。でも、クリアスカイの上がりって激ヤバでしょ」
「お前に関係ないだろ」
　ファクトに提供したクリアスカイ。あれはかなりの収入になったし、まだまだ継続的に収益を産んでる。確かに、とんでもなく有難い仕事だった。
「SSSも大ブレイクで？」
　7人組の、去年デビューしたキャッチーなミクスチャーバンドだ。今のとこ、まだ俺がプロデュースしてる。正式名称はサニーサイドサマー。あんまりにも夏過ぎるバンド名だったから、デビューにあたってオールシーズン向けの改名を提案したのは俺。
「ねぇねぇ、シンリさん免許ないっしょ」
「ないけど」
　俺は23区内生まれ、23区内育ち、23区内在住。車なんかあっても維持費が嵩むだけだ。
「俺あるよ」
「知ってる」
　こいつは神奈川。まあ、免許があれば便利なんだろう。今も川崎住みなんだし。
「車買ってよ」
「はぁ？」
「俺が運転してあげるね」
　声が弾んでる。何でこいつはこんな勝手に期待してウキウキしてんだ。
「いらない」
「なんで？　コルベットがいいなぁ」
「バカだろ。最悪買うとしても俺が選ぶ」
「コルベットいいよ？　カッコいいよ？」