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バカだ。完全にバカだ。知ってたけど。立ち上がって俺の顔を覗き込んで来るから、手でしっしっと追い払う。
「ええー」
「何でお前とキスせにゃならん」
「仲良しだから」
いい大人が仲良しってなぁ。いや、こいつはまだハタチだからガキか。いやいや、ハタチならもうちょい分別をつけてくれ。
「そういうことにしといてやる」
仲がいいか悪いかで言えば、いい方なんだろうとは思う。うちにこうやって遊びに来てるんだから。
俺は別に人付き合いがいいとか社交的とか、そういうタイプじゃない。だから、うちに遊びに来るヤツなんて滅多にいない。志見ってヤツが一人いるだけだ。志見とは一緒にやってるユニットがあるけど、どうしても一緒に作業しなきゃなんない時くらいしか互いの家には行かない。
ヒロはへへっと照れ笑いして、俺に小さく手を振る。これ、可愛いつもりなんだろうな。
「いってきまぁーす」
「行け行け」
ヒロはやっと仕事部屋から出て行った。さあ、集中集中。あいつがいても、集中できないわけじゃないけど。
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