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知識はあった。あれをああするのだ。そのあれを目の前に絶句。遡ると、幼稚園児のちんこの記憶しかないことに気づく。あれが、どうしてこんな凶器と見紛うものに変化したのだろう。私にいろいろなことがあったように、こいつにもいろいろあったのかもしれない。そいつに個体としての意識があるのなら一緒に酒でも飲み明かせただろう。
でもそいつはイサさんの一部で、今は脳からの命令で私の中に入ることしか考えていない。
怖いよりも恥ずかしい。足の毛の処理が甘いんじゃないだろうか。
いつもはパンを作るためにあるイサさんの手が私なんかを撫でてくれる。パンよりも丁寧に扱ってくれる。空気を抜くために雑に投げられたり、そのあとで伸ばされたり、ねじられたりするパンじゃなくてよかった。今日見ただけだけれど、頭は冷静にそんなことを考えていた。
当たり前だけれど、そんなところを触られるのも舐められたこともない。
「ひぃぃぃ」
と声を上げてしまう。
「もう少し色気のある声出せない?」
「すいません」
「いや、面白いけど」
脇の下が弱いみたい。くすぐったい。どうして会ったばかりの人のそんなところを舐められるのだろう。まだ夕食を1回共にしただけ。
明かりをつけたままだからいろいろ丸見え。近い。私たちの間に隙間がない。こんなに人と密着した記憶がない。プレハブの閉塞感とは違う。解放感もありつつ、やはり恥ずかしさが勝る。
「息止めないで」
イサさんの言葉が理解できない。だって、痛い。無理だ。A>BじゃなくてA∪Bでもない。勉強はできたはずなのに習っていない。体が強張る。必然的に呼吸は止まる。同じ高校のヤリマンだった京ちゃんから発された言葉のうろ憶え。どうすればいいのだろう。絶対に入らない。裂けちゃう。助けて、京ちゃん。今こそご教示を。
ああ、私の体の中にこの人の一部がある。そんなにぐりぐりしないで。
痛い9割、気持ちいい1割。最初はそんなものなのかもしれない。
終わると離れちゃう。それが寂しい。
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