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合流
と思ったのだが。
「…………まあ……そう、だよね……普通にね……トップにはサクッと情報行くよね……」
学園内のことであれば当然学園長がトップではあるが、『学園内側近』が起こした問題であれば、ツートップに連絡が行く。
当然のことだろう。
それにしてはリオンと並んでソファに座るルエナ嬢の顔色が悪いことが気になったが──澄ました顔でお茶を飲んでいるが、リオンの表情に何かピンと来たのか、婚約者の許しもなくシーナはその隣へと気易く腰掛けた。
「……ほっほぅ……なるほどねぇ~?」
「な、何のこと…かな?」
「とっぼけんじゃないわよっ!!」
「ヒッ……」
微かな悲鳴が聞こえた気もしないではないが、構わず文字通り『天使の輪』が輝く金の頭にアイアンクローをカマす。
「り~お~ん~く~ん~?や・く・そ・くっ、したよねぇ~~~~~??」
「いたいたいたいたいたいたいたいっ!!」
「『その時』はアタシだけじゃなく、アルも同席するんだよぉ~…ってぇ……」「
「いたいたいたいたいたいたいたいっ!!マジ痛いっ!!気持ち悪くなるぐらいキマってるから!ツボじゃない!絶対ソコなんかヤバい点突いてるからっ!!」
別に伝説的アニメの如く『秘密の気孔』を突かれているわけではなく、酷使しすぎた視神経をガッツリ捉えられているだけなのだが、あまりにも的確かつシーナの指が細すぎて頭蓋骨粉砕レベルで激痛を味わっている。
むろんシーナもわかっていて手加減せず、自分の指が疲れるまで押し切った後、今度は両手を握りしめてこめかみの少し後ろ、耳の上を容赦なくグリグリと責めた。
「いだだだだだだだだだっ!!ぎぶぎぶぎぶぎぶぎぶ!!!やめてぇぇぇぇえぇぇぇぇ」
「うっさいわ!この年で眼精疲労なんて笑わせる!!天誅じゃ!存分に揉みしだかれていろっ!!」
拳は指先と違って疲労感はない。
むしろ二の腕が疲れた時が止め時である。
ちなみにアルベールもやられたことがあり、子供の時は何ともなかったのにある時から激痛を伴うようになった。
今のリオンほどではないにしても、シーナの細い腕と指からは想像ができないほどの衝撃を味わい、指が離れてホッとしたと同時に視界が驚くほどクリアになった感動は忘れられない。
そしてあのふたりのじゃれ合う姿は恋人同士というより──
「うん。あれは何というか」
「うん。まさしく」
まさしく、我が家の猫。
どうやらクールファニー家は子沢山なだけでなく、飼い猫も数匹いるらしい。
兄弟がハハハと乾いた笑いを上げているところを見ると、やはり見慣れた者には『男女の睦み合い』には見えないようだ。
とは言いつつも、今やリオンは押される体勢を有効活用してルエナに寄りかかり、どうやら『まっさーじ』で視神経が解れてきたようでふにゃぁ…と、まさしく猫のような至福の表情を浮かべている。
「クッ……ツボが的確過ぎたか……解れてるんじゃないわよ!裏切者っ!ルエナ様の驚愕もしくは困惑顔を瞼に焼き付けるチャンスだったのに!」
シーナはシーナでどうかしている。
アルベールには安定の『シーナ嬢』だったが、微妙にズレた本音を述べる元・恋慕していた人を、イストフは『見知らぬ者』を見る目付きで眺めているほかなかった。
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