怒りの力

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迎賓館では豪華絢爛なパーティーが開かれていた。 社交の場が得意な方ではない碇(いかり)博士は、 着慣れないタキシードに身を包み、 政府のお偉方とぎこちなく挨拶を交わしていた。 きょうのパーティは自分が主役。そして、この場が 自分の人生の分水嶺になるかもしれない。 如才なく振舞い、自分を最大限アピールしなくてはならない。 緊張のあまり、額に汗がにじむ。 胸ポケットから飾りのハンカチーフを引き出し汗を拭ったその時、 黒髪を後ろに撫でつけた、ひときわ恰幅の良い軍服姿の男が入ってきた。 胸にはいくつもの勲章がぶら下がっている。 傍らには赤いカクテルドレスを着た美女が付き従っている。 碇はすぐに2人に気が付き、直立不動の姿勢で挨拶をした。 「閣下。本日はこのような晴れがましい席をご用意いただき、  ありがとうございます」 閣下と呼ばれた男は鷹揚に答えた。 「そんなにしゃちほこ張ることはない。きょうの主役は君なんだから。  しかし、本当に素晴らしい成果を出してくれた。  この発明で、我が国の人民1億人が救われるかもしれない」 「お褒めに預かり光栄です。  これもひとえに、閣下がこの研究のために  莫大な費用を提供くださったからこそです。  それがなければ、決してここまではたどり着けませんでした」 「あの発明の価値からすれば安い投資だ。実用化までもう一歩。  必要なものがあれば何でも言いなさい。すぐに用意させよう」
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