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碇は深々と頭を下げながら、ほくそ笑んだ。
この国では、この男の言葉が絶対だ。
機嫌を損ねれば即座に電気椅子にかけられるし、
気に入られれば王侯貴族のような生活も夢ではない。
今の言葉からすると、今回の発明のおかげで、
自分はこの国で生涯安泰に暮らせそうだ。
今から10年前、はるばる日本から、
言葉も何も分からないこの国までやってきて以来、
プロジェクトリーダーとしてこの研究をずっと引っ張ってきた。
この間、多くの誹謗中傷や妨害工作、サボタージュも受けた。
この国の研究者からすれば、どこの馬の骨とも知れない
30代の若造に偉そうにされるのが気に入らなかったのだろう。
本当に辛く苦しい日々だったが、やっとそれが報われる日が来たのだ…
碇がそう感慨にふけっていると、
頭の上から鼻にかかったような女の声が聞こえてきた。
「その発明ってどういうものなの、パパ?」
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