両想いは罪ですか?

1/1
前へ
/1ページ
次へ
僕は、君のことが好きだ 笑う時、目が三日月のように細くなるところも 怒る時、絵に描いたように頬を膨らませるところも 照れる時、少し俯いて斜め下を向くところも 泣く時、声をあげずに静かに涙を流すところも 君の仕草全てが 僕は、大好きなんだ 周りからは、付き合っちゃえよなんて言われるが 付き合うなんて、そう簡単なことではない 人には消せない過去があって 人には消せない思い出があって 今はそれに、囚われている その恐怖に怯えて 僕は、君に想いを伝えられない ――― 私は、君のことが好きだ 笑う時、見た目に似合わず優しく笑うところも 怒る時、どこか悲しげな表情で怒りをぶつけるところも 照れる時、左を向いて、頭を右手で掻くところも 泣く時、子供みたいにワンワン声をあげるところも 君の仕草全てが 私は、大好きなんだ 周りからは、付き合っちゃいなよなんて言われるけど 付き合うなんて、そう簡単なことじゃない 人には消せない過去があるし 人には消せない過ちがあるし 君にそれを知られることが怖い その恐怖に怯えて 私は、君に想いを伝えられない ――― ――― 「ずっと好きでした」 ある日、僕は君に伝えた 過去を忘れられたわけじゃない ただ、未来を変えていくためには 現在(いま)、後悔しないことが大事だと そう思った ――― 3年前 僕とのデートの帰り際 彼女は何者かに刺殺された 僕が彼女を家まで送っていれば あんなことにはならなかった ひどく、後悔した 絶望した そのことを僕は、忘れられなかった でも君となら 消せない過去も、消せない思い出も 一緒に背負って生きていけると そう信じた 今度こそ、大切に守ると そう誓った だから僕は 今、君に想いを伝えた ――― 「私も、ずっと好きでした」 私は、君に想いを伝えた 君からの突然の告白 過去を忘れられたわけじゃない でも、未来を変えていくためには 現在(いま)、後悔しないことが大事だと そう思った 「1つだけ、聞かせて?」 私は君に問う 「3年前、君の彼女は死んだ」 君は、少し戸惑った顔を見せる 私は優しく微笑みながら続ける 「あの子を殺したのは、私」 目を見開いたまま、声も発せずに、動かない君 その顔すらも、愛おしい 「付き合うっていうのは、相手の過去、現在、未来をちゃんと共有して生きていくことだと思うの」 君に、ゆっくり、近づく 「私は、あなたの全てを、受け入れられる。あなたを、心から愛せる」 動かない君の耳元で、私は優しく囁く 「―――あなたは私を愛せますか?」
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加