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「嫌じゃないです」
僕の言葉に櫂人さんは顔を上げる。
「しーちゃんの身代わりが悲しかっただけです」
「身代わり?」
「櫂人さんはしーちゃんが好きで、でもしーちゃんはお義父さんのパートナーだから、だから同じ顔をした僕を代わりに・・・」
言ってるそばからまた涙が溢れてきた。
「それにしーちゃんと同じ顔をしてる僕が誰とでも寝るのが許せないんですよね?」
自分の言葉が胸に突き刺さる。そして、壊れた涙腺が再び涙を流し続ける。そんな僕に櫂人さんは焦ったように僕の肩を掴んだ。
「違う。いま話しただろう?偲さんを好きだと思ったのは勘違いだって。オレは初めから律希が好きなんだ。確かに律希のいままでの行動も腹が立った。だけどそれは律希が好きだからだ。偲さんは関係ない」
僕の目を見て真剣に言ってくれるけど。
「いいです。そんな嘘をつかなくても」
「嘘じゃない」
「高校生が幼稚園児に恋をするなんて、ありえないです」
それが本当だったらもう犯罪だ。
「オレもそう思ったから、偲さんを好きだと勘違いしたんだ。でも違った。偲さん単体で会ったって、オレは何ともなかった。だけど律希は違う。律希の香りを嗅いだだけで身体がおかしくなる。律希のことしか考えられなくなるんだ。日本に帰ってきて、コンビニで律希の香りを嗅いで帰った夜、この家で一体何回律希を思いながら一人でしたと思う?」
その言葉に思わず頬が熱くなる。
「それに嘘をつくならもっとましな嘘をつくさ。日本で再会した律希があまりにも綺麗だから惚れた、とかね」
確かに、どうせつくならもっとありがちな嘘をつくよね。それに櫂人さんは弁護士だ。もっと口は立つはず。
もし、本当に本当だったなら・・・。
「櫂人さんは変態さんですか?」
その素直な感想に、櫂人さんはものすごくバツの悪い顔をして言葉に詰まる。
「・・・・・・いや、別に幼い子が好きなわけじゃない・・・と思う。律希だからだ。律希だけが特別なんだ」
その真剣さが伝わってくる。番の不思議。
僕の櫂人さんへの好きな気持ちも伝わってるのかな?そう思ったそばから、櫂人さんは僕の顎に手をかけて上を向かせる。
「律希の思いが流れてくる。これが律希の本心だろ?」
そう言って口付けてくる櫂人さん。
本当に僕が好きなの?
しーちゃんじゃなくて・・・。
触れた唇から、さらに思いが伝わってくる。
僕はそっと唇を開いた。するとそれに気づいた櫂人さんが舌を差し入れてくる。少し戸惑い気味の櫂人さんの舌。僕はそれを迎え入れる。
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