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「随分辛そうだね。早く家に帰ろう」
先生の香りにアルファの支配力が混ざり込む。その力に動けない僕のうなじに吐息を吹きかけられ、僕はその嫌悪感に全身が粟立った。
嫌だ・・・!
僕はどうにか身を捩って先生の下から出ようとするも、上から覆い被さる先生はさらに腰と胸に腕をまわして僕を捉える。
気持ち悪い・・・。
ぐっと抱きしめられながらうなじを舐められ、その気持ち悪さに気が遠くなる。なのに身体はアルファの力を感じてもう抵抗をやめてしまった。
「もう、すごく香ってるよ。これだけ発情してたら噛んでも大丈夫だね」
・・・・・・え?
その言葉の意味を理解した瞬間、うなじに当たる硬い感触。そして・・・。
噛まれる!
鋭い痛みを覚悟して目をギュッと閉じたその時、不意に先生の腕が僕から離れ、僕の上から重みが消えた。
そして聞こえる、鈍い音とどさりと何かが地面に落ちる音。
何が起こったのか分からない僕の腰に再び腕を回され、僕は勢いよく車から降ろされた。
その時香る別のアルファの香り。
その香りに心が一気に弛緩し、身体から鳥肌が消える。
誰・・・?
頭が理解する前に心が落ち着き、僕は一気に発情の波に飲まれてしまった。
そこからはもう、断片的にしか覚えていない。
気がつくと僕は知らないベッドに寝かされていた。
この香り・・・あの時のだ。
僕を先生の車から降ろしてくれた人の香り。
ここはあの人の家?
まだ濃い香りに満ちたベッドに、僕はシャツを一枚着せられて一人で寝ていた。
満足しきった身体と、満たされた心。
何が起こったのかは何となく分かっている。
僕はあの人と発情期を過ごしたんだ。
誰かと過ごすのは初めてだったけど・・・。
アルファと過ごす発情期って、あんなに凄いんだ・・・。
ほとんど意識が飛んでしまって覚えていないけど、その覚えていることは全部、今までに感じたことの無いくらいの快感だ。
激しく熱い猛りを穿たれ、何度も高みへ押し上げられる。その快感と言ったら、普段の交わりでは考えられない程強烈で、おかしくなりそうだった・・・いや、おかしくなった。あんなにすごいのにもっと欲しくて自ら腰を振り、離さないように締め付け、あまりの強い快感にそのまま戻って来れなかった。
そんな激しい交わりを一体どれだけしていたことか・・・?!
思い出すと顔が熱くなる。
僕にあんな性欲があったなんて・・・。いくら発情期だからって・・・!
あんなに乱れて声を上げたのは初めてだ。いくら与えてもらっても足りなくて、泣いて欲した。
アルファと過ごす発情期って、あんなに凄いの?
一人で過ごす時との違いに驚きを越して頭が白くなる。
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