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布団から香る香りと自分の痴態を思い出して身体が熱くなる。それに・・・。
なに?このドキドキ・・・。
心臓が壊れそうなくらいドキドキしている。
初めで起こる身体の変化。
こんなにドキドキしたのは初めてだ。
発情期をアルファと過したから?
それとも残り香にあてられている?
止まらない心臓の音。
だけど・・・前にもこんなことがあった気がする。
あの夢の中の僕も、こんな風に胸がドキドキして身体が熱くなってた。
あれはやっぱり昔の記憶だったのだろうか?
そんなことを思いながら身を捩った瞬間、首の後ろに痛みが走った。
思わず当てた手に当たる感触は・・・。
ガーゼ?
そこを上から押さえると鋭く痛み出す。
その痛みに身体が凍りつく。
うなじに走る痛み・・・まさか・・・?!
頭の中に浮かぶ自分の身に起きた出来事。
それは今までずっと恐れていたことだと言うのに、心は不思議と落ち着いていた。それどころか湧き上がってくるのは幸せ・・・。
うなじを噛まれた。
それは恐らく間違っていない。なのになんで、こんなに心が穏やかなんだろう。
番になると、相手が誰であっても幸せな気分になるの?
そう思ったそばから、それは違うと頭が否定する。
母が結婚するまで住んでいた施設で、無理やり番にされたオメガが泣いているのを散々見てきたじゃないか。
じゃあなんで、僕の心はこんなに満ち足りているんだろう?
そもそも、僕を噛んだのは誰?
記憶を辿っても思い出すのはベッドのシーツや、知らない天井、それにその人の胸元や首元だ。
つまり、バッグからの時はベッドを見て、正常位の時はその人にしがみついて顔を見ていないのだ。
僕、顔も知らない人と番になっちゃったんだ。
だけど、この香りはすごく落ち着く。ドキドキするけど・・・大好き・・・。
そう、大好きなんだ、この香り。
といことはこの香りの持ち主も好きということ?
・・・でも、それは誰?
先生でないことは確かだ。
あの時助けてくれた人だよね。でもその時にはもう、この香りは僕を落ち着かせてくれた。
もっと前に会っていた?
そう必死に思い出そうとしていたら、玄関が開く音がした。そして寝室に近づく足音・・・。
「起きてたのか。寝ているうちに帰ってこようと思ったんだが、悪かったね。誰もいなくてびっくりしただろ?」
そう言って入ってきたのは、あのコーヒーを買う弁護士さん。
そうだ、この香り・・・。
いつもレジをする時に少しだけ香ってくるこの人の香り。だけど、いつもはこんなにドキドキしないのに、なんでいまはこんなに・・・。
「律希、うなじは大丈夫か?」
僕がベッドから身を起こそうとすると、その人は近づいてきて起きるのを助けてくれる。そしてベッドに座る僕の背中に枕を立ててあてがうと、そのまま横に座って僕の腰に腕を回した。
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