809人が本棚に入れています
本棚に追加
この人の香りが僕を包み込む。そのなんとも言えない幸福感に驚きながらも、僕はその人に身体を預ける。
「どうした?痛むのか?」
心配そうなその声に僕は首を振る。本当は痛むけど、我慢できないほどじゃない。
やっぱりこの人が噛んだんだ。
この人に触れたところが熱く、身体が歓喜する。それに心が繋がってるのを感じる。
僕を本当に心配してくれている。それに、僕に対する愛情が流れ込んでくる。
僕もこの人が好き。
もっとぎゅっとして欲しい。
だけど・・・。
「あなたは誰ですか?」
僕はあなたを知りません。
あなたはいつから僕を好きですか?
僕はいつから、あなたが好きですか?
僕のその問に、その人は僕の顔を覗き込み、ふわっと笑った。
「あんなに激しく愛し合ったのに、オレのこと覚えてないの?」
そう言って僕に口付けると、激しく貪り始める。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら口内を愛撫され、シャツの裾から差し入れられた手が、おそらく散々弄られて敏感になっている胸の飾りをきゅっと摘む。その甘い痺れが身体に火をつけ、彼の腕によって上がったシャツの裾から覗く僕の昂りが頭をもたげ始める。
「身体はオレを覚えてるのに・・・なんて薄情な奥さんなんだ」
そう言いながらも楽しそうにその口元に笑みを浮かべてシャツを胸までたくしあげると、顕になった先端に吐息を吹きかける。それだけで身体がびくりと反応する。
「・・・奥・・・さん・・・?」
発情期の間中ずっとしていた身体はすぐに欲情し、頭に靄がかかりはじめる。
「そうだよ。今届けを出してきた。番届と婚姻届」
その言葉に一瞬で意識が戻る。
「・・・・・・え?」
あまりのことに頭がさっと冷静になる。
届けを出した?
「自分で書いたんだよ。これも覚えてないんだな。仕方の無い子だ。なら思い出させてあげるよ」
そう言うと耳元に唇を寄せて、吐息と共に囁く。
「同じことをすれば思い出すさ」
そう言うと僕の身体をころんとひっくり返して、腰を高く持ち上げると熱い猛りをあてがった。そして・・・。
「ああ・・・んっ」
ずっと彼を受け入れていたそこはまだ柔らかく、難なく彼を飲み込んでいく。けれど、発情期が明けた頭は意識をそのまま残している。
彼の言葉に驚きすぎてフリーズしてしまった身体が、それでも押し入ってくる熱い昂りに反応してじわりと中を湿らせる。そして湧き上がる快感に身体を震わせ、逃がさないようにそこを締め付ける。
無意識に動く身体に羞恥で熱が上がる。
僕の身体おかしい・・・。
すると後ろから含み笑いが聞こえる。
「こんなに身体は覚えてるのに・・・」
その言葉に身体がさらに熱くなる。
「耳まで赤くなってかわいいね、律希。さて、再現だよ」
そう言って僕の背に覆い被さるように深く腰を進めると、彼は僕の耳元に囁いた。
最初のコメントを投稿しよう!