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僕と先生はそういうことをしているけど、そこに愛情はない。
先生が愛しているのは奥さんだけだし、僕も特に先生が好きだと言うことでは無い。じゃあなぜ身体を開くのか・・・。
それは先生が僕を求めるから。
先生はどんなに不安に駆られても、僕を抱くと安心するのかちゃんと眠る。そしてちゃんと眠ればごはんも食べれて仕事もできる。だから僕は先生が眠れるように睡眠安定剤の代わりに抱かれ、抱き枕よろしく寝てる間はくっついてあげている。
それでいいのか?
僕は別に構わなかった。
僕は誘われれば誰とでも寝れる。
だからって積極的にその手のお店やハッテン場に行ったりはしないけど、日常生活を普通に送っていて誘われれば断らない。特定の人が出来ればその人だけとしかしないけど、特にいなかったら、それこそ日替わりで違う人とも寝れる。
今はいつ先生からお呼びがかかるか分からないから、他の人は断ってるけど。
いつからこうなのか?
最初からこうなのだ。
特に僕は自分が大事だとは思っていないし、性交することが悪いことだとも思っていない。
だって僕は、そのために生まれてきたのだから。
僕がそんな風に思うのは、僕が生まれてきた境遇にあるのだと思う。
僕には最初、片親しかいなかった。
そしてその親は僕を15才で生んだのだ。
物心ついた時から、僕にはその人しかいなかった。
その人は、市が運営する片親オメガのための施設で、僕と二人で暮らしていた。そこでできる限りのバイトをして通信制の高校に通い、ぎりぎり最低限の暮らしをしていた。
そこに祖父母の姿は無かった。
物心ついた時はもうその人は高校生だったけど、僕を生んだ時は中学生だったはずだ。なのにそこに親はなく、市の施設にいたのだ。何があったのかなんて、誰に教えてもらわなくても分かる。
その人はとても綺麗で賢かった。あんな逆境の中にありながらいつも笑って過ごしていた。目の前のことだけに囚われず、先を見据えて高校を出て、ありとあらゆる補助を調べて受けて、通信制の大学にも入った。昼間はめいいっぱい働いて、夜寝る時間を削って勉強していた。その間も僕の世話をちゃんとして・・・。
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