獣化

1/1
前へ
/1ページ
次へ
 ここはとある片田舎。田園地帯が広がっていて、その中に近代的な住宅地がある。その住宅地の裏には、小高い丘がある。そこの開発はなぜか進んでいない。昔からここには都市伝説があり、ここに立ち入った人は人間ではなくなると言われている。  夏休みのある日、次郎(じろう)はいつものようにテレビゲームをしていた。宿題は午前中にやって、午後はテレビゲームで遊ぶのが日常だ。 「次郎、遊ぼうぜー」  突然、外から声が聞こえた。翔太(しょうた)と悟(さとる)と博(ひろし)だ。今日は朝から友達とかくれんぼをする予定だった。 「うん」  次郎はテレビゲームを切り、玄関に向かった。そこには3人が待っていた。 「次郎、今日はかくれんぼするんだったよね」 「うん」  次郎は嬉しそうな表情を見せた。今日は同じ住宅地の子供たちと初めてのかくれんぼだ。 「行こうぜ!」 「うん」  4人はこの近くの丘でかくれんぼをすることにした。その丘は丸い形をしていて、周りの人からは忌み嫌われていた。  4人は丘に向かった。この丘の言い伝えを知らずに。そして、この後次郎がとんでもないことになると知らずに。  4人は丘のてっぺんに着いた。丘からは4人の住む住宅地が見える。その向こうには田園地帯が広がる。とてもいい眺めだ。4人はその眺めに感動していた。 「ここで始めようぜ」  翔太の提案に、3人はうなずいた。 「じゃんけんポン!」  最初に抜けたのは、悟だ。 「じゃんけんポン!」  次に抜けたのは、次郎だ。 「じゃんけんポン!」  最後に抜けたのは、翔太だ。博が木で目を隠すと、3人はそれぞれの場所に逃げていった。 「もういいかい?」 「まぁだだよ」  次郎は隠れ場所を探していた。この辺りは全く開発されていないようで、雑木林が広がっている。  雑木林の中を歩いていると、次郎はある洞窟を見つけた。その洞窟は素掘りで、何の装飾もない。 「もういいかい?」 「もういいよ」  次郎の声で、博は3人を探し始めた。絶対に3人とも見つけてやる! 「どこだここは?」  次郎は辺りを見渡した。この洞窟は何だろう。この丘の事は両親から全く聞いたことがない。この洞窟の事も、ここに何があるのかも。  と、次郎は何かに気付いた。洞窟の奥で声が聞こえる。 「奥で何か声が聞こえる」  次郎が奥に行くと、何らかの儀式が行われていた。そこにいるのは獣人で、彼らの前には様々な装飾をした獣人がいる。 「何が行われているんだろう」  その時、後ろから誰かが声をかけ、捕まえた。彼も獣人だ。彼らの仲間のようだ。 「ちょ、ちょっと待って、何だよ!」  次郎はじたばたしたが、動けない。 「お前をオオカミにしてやる!」  えっ、オオカミ? そんなのやだ。人間でいたい! 「そ、そんな、嫌だ!」  次郎は前にいた獣人に捕まえられた。次郎は暴れたが、逃げることはできない。 「さぁ、ここに寝るんだ!」  次郎は素早く祭壇に寝かされた。祭壇の前の獣人は祈りを捧げている。 「や、やめろー!」  次郎は抵抗した。だが、程なくして、鎖で両手両足を縛られた。  獣人は呪文を唱えた。すると、次郎の体に何かが起こった。体が熱い。光を帯びている。一体何だろう。次郎は汗をかき始めた。 「な、何だ!?」  次郎は頭を横にして、腕を見た。腕から灰色の毛が生えてくる。手がオオカミのようになっていく。首を上げると、足もオオカミのようになっていく。更に、ズボンが破れ、尻からは尻尾が生えている。 「ワオーン!」  次郎は叫んだ。だが、声までもオオカミになっている。次郎は驚いた。信じられない。これは夢だ。早く夢から覚めろ! 「次郎! 次郎!」  突然、誰かの声が聞こえた。鬼の博だ。次郎は呆然としていた。何が起こったんだろう。今さっきの部屋は何だったんだろう。 「こ、ここは?」  次郎は辺りを見渡した。3人がいる。ここは洞窟の入口だ。 「洞窟の入口だよ」 「見つけて、外に引き出しても暴れてたんだよ」  見つけて捕まえた鬼の博はその時の事を話した。次郎は驚いた。一体あの光景は何だったんだろう。 「そんな・・・」 「どうしたの?」  博は信じられない表情だ。博はその洞窟の事を知らなかった。 「変な人に捕まって、オオカミにされる夢を見たんだ」  洞窟で起こった事を、次郎は話した。3人は信じられないような表情で聞いていた。 「ふーん」  突然、翔太は次郎の腕を見て驚いた。次郎の腕から灰色の毛が生えている。まるで獣のようだ。 「見て! 腕が!」 「えっ!?」  次郎は驚き、腕を見た。次郎は驚いた。まるで獣のように毛が生えている。あの夢は夢だろうか? それとも現実だろうか? 「毛が生えてる」  それを見て、3人は呆然となった。一体次郎の体に何があったんだろう。 「何だろう」 「わからない」  結局そのまま、4人は住宅地に戻った。次郎は下を向いていた。こんな姿になってしまった自分を見て、両親はどう思うだろう。  次郎は家に帰ってきた。次郎は下を向いていた。こうなってしまった自分を見たら、どう思うだろうか? ショックを受けるんじゃないかな? 「ただいま」  次郎は震えていた。家に入るのが怖い。こんな灰色の毛が生えた腕を見たら、びっくりするんじゃないのかな? 「おかえり。次郎、って、その腕、どうしたの?」  扉を開けた母は驚いた。次郎の腕がまるで獣のようになっている。やはりびっくりしてしまったか。次郎はますます落ち込んだ。 「みんなでかくれんぼしてたら、こうなってしまった」  それを聞いて、母は丘の方を向いた。まさか、あの丘でかくれんぼをしていたのでは?  母は次郎の下半身を見て驚いた。なんと、次郎の尻から尻尾が生えている。次郎は尻尾を振っている。 「えっ、お母さん、どうしたの?」 「し、尻尾が!」  次郎は驚き、尻を見た。デニムの短パンが破れて、そこから尻尾が出ている。夢から覚めた時にはなかったのに。帰る途中に生えてしまったのかな? 「な、何よこれ?」  母は信じられなかった。どうしてうちの子がこんなことになったのか? 「どうしてこうなったの?」 「なんだか変な洞窟に入ったら、オオカミにされてしまったんだけど、夢だったんだ」  次郎はうつむきつつ、何があったのか話した。あの丘に入ったらこんなことになるなんて。行かなきゃよかった。 「まさか、呪われた?」 「えっ!?」  次郎は驚いた。呪われるなんて。次郎は信じられなかった。 「そこには昔から犬神さんがいて、ある洞窟に入った人は日に日にオオカミになっていくんだよ」  母はあの丘の昔話を知っていた。あの丘に行ってはならない。あの丘の洞窟に入ると、日に日にオオカミになっていき、人間ではなくなる。 「まさか、あの洞窟は・・・」  次郎はあの洞窟で起こった出来事を思い出していた。祭壇の前にいた獣人は犬神だろうか? あとどれぐらい人間でいられるだろう。あとどれぐらいこの家で暮らせるだろう。そう思うと、ますます落ち込んでしまった。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加