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そう言いつつも寺田さんとこうやって掛け合えたのはいつ振りのことだろう。
メガネの中の大きな目でウインクされてドキッとしてしまう。
「しょうがないな北条。勝負事に女の世話になっちゃあ」
係長は寺田さんとのやり取りに舌打ちしながらお金を奪うと忙しそうに足早に部屋に戻って行った。
「ありがとう寺田さん、お金すぐ返すね」「気にしないで。ところで北条くん明日の夜空いてる?」
僕は明日どころか毎日空いてるとアピールしたいのをグッと堪えて「大丈夫だよ」と落ち着いた調子で言う。
「本当、それじゃあ頼み事聞いてもらっちゃおうかな?御徒町の展望台のレストランで待ってるね」
突然の急展開に戸惑いながらも笑顔で手を振って応えたのだった。
その日の夜、ベッドに横になって明日のデートの事を考えて、胸が一杯になる。僕はしょっちゅう横目で彼女を追っていたが彼女が僕を気にかけているとは全然気付かなかった。
鏡に映る自分を寝そべりながらみた。
『お前も隅に置けないな』と呟き布団をかぶり寝たのだった。
その夜は夢を見た。
ゴーゴーと時折音がしている。
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