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わたしと彼は誰にも見つからずに村の外縁部近くまで延々と小走りでかけ続けた。
外縁部の境界に児童公園だった広場を見つけると、苦しそうにわき腹を押さえた彼はついに立ち止まり、苔むした石のベンチにへたりこんだ。怪我も出血も大したことはないはずなのに。
とにかく、ここではまだ安心できないので、わたしは更に先を促そうとしたけど、彼は立ち上がる気配すらない。
なんて、か弱いのだろう。
そうだ。だからこそ守ってやりたいと思う。
昨夜、捕まった彼をひと目見たとき、そう感じた。
村の者から小突き回されている彼に心を痛めた。
だからこそ、わたしは行動を起こしたのだ。
わたしは急き立てるのを諦めて、彼の横に腰を下ろすと、疲れ切って寄りかかってくる頭を肩に抱いて姉のように優しく撫でてやった。久しぶりに味わう至福の時だった。やがて彼の身体から緊張が解け、ワンピースの太ももの上に頭が乗った。
お気に入りのワンピース。
その肌触りがいいのか、彼は軽く寝息をたてはじめた。怒れる者たちに見つかる前に早く逃げなければならないけど、わたしは彼が起きるまで膝枕をし続けてやろうと思った。
*
わたしと彼は石のベンチで陽が沈む前まで休むと再び移動を開始した。
彼のことを考えて今度は走らずに歩くことにした。村の外縁部を越えてしばらく進むと、廃墟と化した郊外の住宅地に出くわした。新参者に気づいた犬や猫、その他の様々な動物たちが、しばしの縄張り争いを止めて、わたしと彼に敵意があるかどうか観察しはじめた。彼は野犬の群れを見て恐れたようだが、わたしは怖くなかった。だって彼らが襲ってくることがないのを知っているからだ。わたしは彼を気遣いながら、住宅地の新たな支配者たちを避ける道を示すと、二人でさらに郊外へと歩き続けた。
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