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prologue X+3年(丹内)
ガチャリと鍵を開けて、玄関に入る。
「ただいまー」
靴を脱ぎながら言うと、鷹取の声が、
「おかえり」
と、迎えてくれた。
仕事で戦うために武装していた見えない鎧が、その柔らかな声を聞いただけでがしゃがしゃと外れ、素の自分に戻って、緑に溢れたリビングへ入る。
「お疲れ」
「うん」
それ、もはや樹木だろ、と何度か突っ込みを入れたことのある鷹取の一番好きな観葉植物を背に、奴は穏やかに笑っていた。
その柔和な笑顔を見上げると、何だか俺は泣きたくなって、そんな気持ちに気づきたくなくて、冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターをごくりと飲んだ。
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