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私は電車に乗っていた。6人掛けの座席の真ん中に座っていた。
外はまだ明るく、青と白の空模様のきれいなコントラストが映えていた。
反対側の座席には男の子が座っていた。
とてもきれいな顔立ちで中世的な雰囲気が感じられる。まるで、女の子といわれても納得しそうな雰囲気だ。
男の子は膝の上に白の箱を持っていた。丁寧に包装され、水色のリボン結びが目を引く。誕生日プレゼントか何かだろうか、男の子の雰囲気をさらに際立たせているかのようだった。
私は男の子をじっと見ていた。決して不審者でもそういう趣味でもないが、やはりいくつになっても人間は綺麗なものには目を引くものだ。
じっと見続けていたのか男の子はこちらの視線に気づき、まっすぐに返してきた。私は何だか悪い気がして、目をそらす。
男の子はまだ駅についてもないのに席を立ち、私のもとへ歩いてきた。
そして少し小さな影から、あの白い箱を差し出される。
えっ。と声を漏らし私は男の子を見上げた。整った顔に儚げな雰囲気、将来有望そうな彼は蚊の鳴くような声で呟く。
「あげる。」
そういうと電車が駅に着き、扉が開く。ちょっと待って、という声が聞こえなかったのか、彼は電車を降りてしまった。私は返そうと降りようとしたが間に合わず、扉の向こうで何かを呟いていた彼と離れてしまった。
「どうしよう。」
私のこの呟きも、彼の耳には届かないのだった。
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