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URM-4
この薬剤の事は後川内も知らない。誰にも教えていない。
ー URM-4 ー
これは、私が個人的に開発した薬剤。筋肉注射で投与するものだ。
私は決して忘れない。忘れてやろうなんて思わない。夫から連日浴びせられた罵倒と肉体的苦痛の日々を。
私を怒らせたらどれほどの目に遭うのか、夫には嫌という程思い知らせてやらないと気が済まない。
だから予め、URM-4を私自身に投与しておいた。シズマリンの効果を無効化する、ワクチンのようなものと言えば分かりやすいだろうか。
ただ、半年ごとに投与しないと効き目が切れてしまうから、その都度所員の目を盗んで薬剤を調合しなければいけないのが、唯一の欠点ではあるのだけれど。
シズマリンはほぼ無香だから、どこに散布されても気付かれることはない。
夫もそう思ったのだろう。室内にこっそりとソレを撒いていた。でも、開発者の私までごまかすことは出来ない。ほんのわずかな香りでも、私にはすぐにソレと分かる。自分ではろくに製薬を開発もしないで、私の生み出したソレを使う厚顔無恥な夫により一層怒りを覚えた私は‥‥‥
私の怒りが収まるまで、夫の身が持つだろうか。
それだけが心配だ。
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