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鬼ごっこは長く続かなかった。
「あだっ!」
かかとの高い、走るのに不向きな靴だった菜々美が足を捻って転ぶ。
「菜々美っ!?」
菜々美の悲鳴に崇が思わず立ち止まり、彼女を振り返る。
その目に映ったのは、アスファルトを跳ねんばかりの勢いで転がってきた怒り地蔵が菜々美に激突する瞬間だった。
「ぎゃっ!?」
菜々美が短く呻く。
激突の勢いで地蔵は跳ね上がり、そのままうつ伏せの彼女の背に突き刺さる。
「ガ…ッハ!」
再び悲鳴を上げたきり、菜々美の動きが止まる。
しかし恐るべきことに地蔵は菜々美の上で更に2度、3度と繰り返し跳ねる。
「なんで…なんで…。」
非現実的な光景を前に、うわ言のように呟き、崇は恐怖で動けなくなってしまった。
一体、どんな仕掛けなのか。いや、これが世に言う超常現象という奴か。
(何で菜々美がこんな目に遭うんだ。コイツは一体なんなんだよ!)
頭の中でいくつも疑問が浮かぶが、答えは無い。
ピタリ、と怒り地蔵の動きが止まる。
(気が済んだのか…?)
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