怒り地蔵

5/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
しかし、続く地蔵の呟きに、崇の全身に冷や汗が滲む。 「河島崇…✕✕市■■3番地…大学3年…経済学部…。」 聞こえてくるのは崇の個人情報…。 「9月24日…天秤座…A型…サッカーサークル…右利き…176センチ…68キロ…。」 「なんで…俺のほうが詳しいんだよ…?」 嫌な予感が止まらない。歯がカチカチ鳴る。 子どもの頃のあだ名、卒業した高校、サークルでのポジション、どんどん詳しくなる情報は、狙いが崇なのだと理解させる。 「うわぁ!!」 たまらず、再び走り出す。 ゴットン。ゴロン、ゴロン、ゴロリ、ゴロゴロゴロゴロッ! 追ってくる音がどんどん近付いてくる。全力で走っているはずなのに進んでいる気が全くしない。 ミシッ。 妙な音が足元で鳴った。 次の瞬間、崇は足がもつれて道路に倒れ込んでしまう。 倒れる間際、崇はもつれる自分の足を確認し、目を疑った。 見たことがない方向に足が曲がっている。 受け身もとらずつんのめるように道路に転がり、遅れてやってきた激痛に泣き叫ぶ。 「っっ!ああ゛あ゛あ!?」 だが、怒り地蔵は容赦しない。躊躇しない。 菜々美にやったように、崇の背を目がけ跳び乗る。 「ガッハ…!」 重さと衝撃に息が止まる。しかし、激しい痛みが気絶すら許さない。 ドスン!ドスン! 怒り地蔵が崇の上でも跳ねる。 バキッ。ミシッ。ボギッ。 衝撃と共に体の奥から異音が響き、激痛が津波のように襲いかかる。 「た、す……け…………。」 崇の祈りは、もはや声にならなかった。 そのまま、彼の意識は限界を迎え、恐怖と痛みのなかで暗転した。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加