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数日後、とある大学構内にて。
「ねぇねぇ、聞いた?河島君、ひき逃げされたんだって!」
「河島…ってこの前優子を振った河島崇?」
「そうそう。浮気相手の佐倉井さんも巻き込まれたんだって。」
女子学生2人が噂話に興じていると、もう1人がそこに加わる。
「何の話?」
「あ、優子。おはよー。えっと…。」
思わず顔を見合わせる2人だったが、少し迷った後、おずおずと話題の人物に触れる。
「河島…君のこと、なんだけどさ。」
「崇君?あー、大丈夫大丈夫。もう吹っ切れたから。で、彼がどうかしたの?」
「そっか…。それなら良いんだけど…。」
「何か、ひき逃げに遭ったらしくてさ。大怪我して入院中なんだって。」
優子のカラッとした表情を見て、少し安堵したように友人が続きを話す。
「目撃情報お寄せ下さいって警察がチラシ配ってたのよ。被害者の名前見てビックリしちゃった。」
「ま、優子にヒドいことしたバチが当たったんじゃない?」
「大怪我なんでしょ?そんな言い方、良くないよ?」
友人らに優子のほうからやんわりと釘を刺す。
「さすがに不謹慎か。ゴメンゴメン。」
「でも優子、本当に大丈夫?二股だった、遊ばれたって散々泣いてたのに…。」
「うん。ホントにもう平気だよ。ぜ~んぶ吐き出したらスッキリしちゃった。」
軽やかに優子は笑う。
「よし、偉い!じゃーアタシ購買でお菓子買ったげる!」
「えー良いの?じゃあお言葉に甘えて~。」
女3人連れだって購買へ向かう。
途中、足を止めて優子は、廊下の窓から空を見上げてうっすらと笑う。
「ホント、スッキリしちゃった。」
その冷たい笑みをすぐ消して、優子は先を行く2人のあとを追いかけた。
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