怒り地蔵

6/6
前へ
/6ページ
次へ
数日後、とある大学構内にて。 「ねぇねぇ、聞いた?河島君、ひき逃げされたんだって!」 「河島…ってこの前優子を振った河島崇?」 「そうそう。浮気相手の佐倉井さんも巻き込まれたんだって。」 女子学生2人が噂話に興じていると、もう1人がそこに加わる。 「何の話?」 「あ、優子。おはよー。えっと…。」 思わず顔を見合わせる2人だったが、少し迷った後、おずおずと話題の人物に触れる。 「河島…君のこと、なんだけどさ。」 「崇君?あー、大丈夫大丈夫。もう吹っ切れたから。で、彼がどうかしたの?」 「そっか…。それなら良いんだけど…。」 「何か、ひき逃げに遭ったらしくてさ。大怪我して入院中なんだって。」 優子のカラッとした表情を見て、少し安堵したように友人が続きを話す。 「目撃情報お寄せ下さいって警察がチラシ配ってたのよ。被害者の名前見てビックリしちゃった。」 「ま、優子にヒドいことしたバチが当たったんじゃない?」 「大怪我なんでしょ?そんな言い方、良くないよ?」 友人らに優子のほうからやんわりと釘を刺す。 「さすがに不謹慎か。ゴメンゴメン。」 「でも優子、本当に大丈夫?二股だった、遊ばれたって散々泣いてたのに…。」 「うん。ホントにもう平気だよ。ぜ~んぶ吐き出したらスッキリしちゃった。」 軽やかに優子は笑う。 「よし、偉い!じゃーアタシ購買でお菓子買ったげる!」 「えー良いの?じゃあお言葉に甘えて~。」 女3人連れだって購買へ向かう。 途中、足を止めて優子は、廊下の窓から空を見上げてうっすらと笑う。 「ホント、スッキリしちゃった。」 その冷たい笑みをすぐ消して、優子は先を行く2人のあとを追いかけた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加