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野良猫
ある日の夜。
勝手口の外から猫の鳴き声がした。
「んにゃー、にゃー」
元気がないような、泣いているような?
「お母さん、猫の鳴き声がするよね?」
「やっぱり?気のせいじゃないんだ」
私は洗い物をしていた手を止め、そっと勝手口のドアを開けた。
外履きのサンダルの上に、ちょこんと座るグレーと白のサバ柄の猫がいた。
「どうしたの?どこからきたの?」
痩せて、少し汚れている。
「もしかして、帰る家がないの?お腹すいてるの?」
娘が私をどけて、座っている猫に近づいた。
「あれ?この子、逃げない。でもガリガリだよ、お腹空いてるんだね?お母さん、なにかない?」
「ソーセージくらいしかないけど。あんまり人間の食べ物はよくないんだけど…」
でも、何もあげないのは可哀想。
「あげようよ、お腹空きすぎてるよ、この子」
細いソーセージを一本剥いてあげた。
むしゃむしゃむしゃむしゃ。
あっという間に食べてしまった。
食べ終わったら、さっとどこかへ行ってしまった。
「どこの猫なんだろ?首輪なかったね」
「もしかすると野良猫かも?」
「寝るとこあるのかなぁ?」
「また来たら、ご飯あげよう。明日買ってくるよ」
娘も私も大の猫好き。
でも同居しているお姑さんは、絶対的な猫嫌い。
「猫を飼うなら私が死んでからにしてね」
とことあるごとに言われている。
だから、飼うことはできない。
でも、何年ぶりかでふわふわの感触を味わって、それだけでうれしくなった。
また来てくれるかな?
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