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埋める時、首輪は外してあげた。
もう自由だよと。
餌皿を見ても、買っておいたオヤツを見ても、首輪を見ても。
涙が止まらない。
勝手口の外から、首輪の鈴の音がする。
「チビ?おかえり!」
いない。
庭を歩いていても、鈴の音。
窓の外に影が見えて、チビ!
気のせいとは思えなかった。
娘もそれは同じで。
「チビ、いるよね?まだ、うちにいるよね?」
「うん、もしかして、天国に行けないのかな?」
「私があんまり泣くから、成仏できないとか?」
「それは、可哀想だよね」
「もういいよって言ってあげようか」
「そうだね」
娘と2人、チビのお墓に向かって手を合わせた。
「もう泣かないから、安心して天国へ行ってね。そして生まれ変わってまたうちに来てね、どんな姿になっても、絶対、チビだとわかるから。約束するから」
それから鈴の音はしなくなった。
チビが死んで5日目。
「お母さん!捨て猫だって、彼氏から電話があった。連れてきていい?」
「え?」
「道路にくたっとしてるって」
「わかった、連れてきて」
娘が連れてきた捨て猫は、とても小さい猫だった。
すぐに病院に連れて行った。
体重110g。
ハムスターほどしかない。
目はまだ見えていない。
「おそらく、生後4日、5日。上手に育てられたら、とても懐きますよ」
上手に育てられたら。
獣医さんのこの言葉には、育てられないかもしれないという意味があった。
小さすぎた。
それは家族も同じように思っていたようで。
ただ、ペットロスになって塞ぎ込んでいた私が元気になるならと、飼うことが許された。
この捨て猫が生まれたと思われる日は、チビが死んでしまった日。
柄もそっくりだった。
「チビ、おかえり」
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