いつもの朝

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いつもの朝

朝6時。目が覚める。 いつも通り、憂鬱な気分で登校の準備をする。 学校に行くの、嫌だな。 どうせ僕なんか休んでも何の影響もないし…。 そんな事を思いながらも、登校の時間は刻一刻と迫ってくる。 家の玄関のノブに手をかけた瞬間、ちょうど2階から降りてきた妹にはちあわせた。 「お兄ちゃん、もう学校?行ってらっしゃい」 「……いって、きます……」 妹、咲妃(さき)は5年生だ。 僕より年下でありながらも、僕よりしっかりしている。皆からの信頼も厚く、生徒会のような存在である児童会に入っているらしい。 思ったことははっきりいうが、人の心を気遣うことが出来る、優しい子だ。 こんなだめだめな兄にもちゃんと接してくれる。 こんな兄でごめんね。 家から出ると、僕の家の塀に寄りかかっている長身の男子が目に入った。 幼なじみであり生徒会長の、西園寺(さいおんじ)(ゆう)だ。 「さく、おはよう」 「おはよう、悠」 「うん。さくは今日も早いね。一緒行こう」 「……うん」 ワンテンポ置いて返事をする僕に、イラつかずにちゃんと会話してくれる悠は、本当に優しいと思う。なんで学校ではあんなに冷たい人間として過ごしているのか、疑問だな。 僕の名前は花園(はなぞの)朔太(さくた)だ。 『さく』というのは、悠が僕につけたあだ名。 小さい頃はお互いに『ゆうちゃん』『さくちゃん』と呼んでいた。 だけど、成長するにつれ美しく成長していく悠と、周りの環境の変化に耐えられなくて、小学校では『悠』、中学に上がってからは『西園寺』と苗字呼びに変わっていった。 小学校の頃から悠の人気は絶大で、一時期はみんな悠のことを名前呼びしていたが、悠は「馴れ馴れしく名前で呼ぶな、不快」と怒ってしまい、名前呼びが地雷として、僕含めみんな、悠のことを苗字で呼ぶようになった。 だけど、僕だけは何故か、名前呼びを許してくれたんだ。許すというか、乞われるというか。 それで周りの反感を買ってしまって、ちょっといじめられたりもしてた。 そんな僕を知ってか知らずか、悠は僕と仲良くするからいじめは酷くなっていって。 僕は悠と絡むのも嫌になり、また『西園寺』呼びに戻ってしまった。 西園寺、と、呼んだ時の、彼の顔。 酷く悲しそうな、でもどこか怒ってもいた表情。 すぐに目に涙を溜めて 「俺のこと、嫌いになったの?」 とか言い出して。
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