2.死神 前編

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 慣れとは怖いもので、二十年も経てばあいつらも怖くなくなる。結局は他人みたいなもので、見えていても簡単にスルーできる。 「あぁ、あいつも死ぬんだな」  最近はただ淡々とそんなことをつぶやけるようになった。  さぁ、ここで本題に入ろう。  今、私の前に死神がいる。死神の世界に年齢という概念があるのか分からないが、この世界の基準で言えば三十代前半の男性といった感じだろう。衣装はおなじみの英国紳士風。  いつもと違うのは、そいつが誰に追従(ついじゅう)するわけでもなくただじっと目の前に立っていること。  私は思わず、死神をじっと見てしまった。 「おや?」  ふと、死神が首をかしげた。  私は心の中で「しまった」とつぶやく。 「ほうほう。これは面白い。見えているんだろう? この私が」  死神がそう言うと、私は諦めたように小さくため息をついた。 「ずいぶん長いことこの仕事をやってきたが、死神が見えている人間に会うのは初めてだ。どうかな? 少し話そうではないか」  私はもう一度、今度は深くため息をついた。
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