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慣れとは怖いもので、二十年も経てばあいつらも怖くなくなる。結局は他人みたいなもので、見えていても簡単にスルーできる。
「あぁ、あいつも死ぬんだな」
最近はただ淡々とそんなことをつぶやけるようになった。
さぁ、ここで本題に入ろう。
今、私の前に死神がいる。死神の世界に年齢という概念があるのか分からないが、この世界の基準で言えば三十代前半の男性といった感じだろう。衣装はおなじみの英国紳士風。
いつもと違うのは、そいつが誰に追従するわけでもなくただじっと目の前に立っていること。
私は思わず、死神をじっと見てしまった。
「おや?」
ふと、死神が首をかしげた。
私は心の中で「しまった」とつぶやく。
「ほうほう。これは面白い。見えているんだろう? この私が」
死神がそう言うと、私は諦めたように小さくため息をついた。
「ずいぶん長いことこの仕事をやってきたが、死神が見えている人間に会うのは初めてだ。どうかな? 少し話そうではないか」
私はもう一度、今度は深くため息をついた。
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