3.死神 後編

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3.死神 後編

「あなたたちも普通に話すんですね」  死神とともに訪れた公園。そのベンチのうちひとつに腰かけ、私はそう言った。 「そりゃあ話せるさ。ただこちらの世界で話す相手がいないというだけで。私なんかはわりと無口なほうなんじゃないかな」  死神はそう言いながらおおらかに笑った。正直なところ、私は拍子抜けだった。避けて、見ないで。ときには恐れもした死神と、私は今こうして雑談にふけっている。  そんな妙ちくりんな感覚と死神のなんとも言えない親しみやすさにほだされて、私は死神と数十分ほどとりとめのない会話を繰り広げた。そしてそのさなか、私が幼少期に死神に追いかけられたこととそれから自分がどう生きてきたかを話していたのである。 「ふむ……なるほど」  死神は一瞬、私の言葉を聞いて表情を曇らせた。しかしそれもつかの間のこと。死神はぷっと吹き出して今日一番の大笑いをしたのだった。 「それはそれは大変だったことだろう。だが許しておくれ。彼にも悪気があったわけではないんだよ」 「どういうことです?」  私が死神に問いかけると、彼はかぶっていたシルクハットを外して膝の上に置き、右手の人差し指でその縁をなぞった。 「そもそも我々の仕事はね、死ぬタイミングが近い人間のそばにいき、いざその瞬間になったときに魂をちゃんと送り届けるというものなんだよ」 「送り届ける?」 「そう。死後に体から抜け出た魂を他の悪しきものたちに持ち去られる前に送り届ける。まぁ「死」にとりつくわけだから「死神」と呼ばれても差しつかえないが、我々は決して人間に危害を加えたいとは思っていないよ」  この話を聞いたとき、私はなんだか申し訳ない気持ちになった。今まで私が考えていたことは上辺だけで考察した偏った持論だったのだと。
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