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一体どれくらいの時が経ったのか。あそこにいた時間も、こちらに戻ってからの時間も、全くわからない。誰も知らない、誰も僕のことを知らない。どの場所も知らない、何もわからない。
僕は真っ白な髪と髭を撫でた。まだ慣れない。疲れやすくなった身体も乱れやすい呼吸も、痛みやすい足腰も、まだ慣れない。こんなにも一人の状態も、まだ慣れない。何たってむしろ、ついこの間まで大勢に囲まれていたのだから。煌びやかで、鮮やかで、軽やかで、美しく、輝かしい者達に。そこでは全員が僕のことを知っていて、褒め称え喜び迎え、来る日も来る日ももてなしてくれた。
ああ、そうだ、亀はどこにいった?あのときの亀さえいたら何かわかるかもしれない。どこにいるだろう?亀よ、亀よ出てきなさい。ああ、彼ももう僕の近くにはいないのだろうか?
それからあの箱はもう捨ててしまったよ。
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