2.母、突然の事故

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2.母、突然の事故

 白、だった。目を覚ました私の視界に飛び込んできたのは真っ白な……空? いや、違う。あれは天井。真っ白な天井だ。 「ああ、中里さん、意識が戻ったのね! 今すぐ先生呼んできますから」  驚いたような女性の声に続きパタパタと廊下を走る音。何よこれ、と思う。まるでテレビドラマだ。夢を見ているのだろうか。しばらくぼんやりしていたがとにかく起き上がろうと体を動かしてみる。すると全身に激痛が走り思わず呻き声が出た。 「ダメダメ、まだ体動かさないで。あなたは事故で大変なことになっていたんですよ」  白衣を着た壮年の男性が私の顔を覗き込んでいる。お医者さんのようだ。 (ここは……病院?)  そう、私は病院のベッドに寝かされていた。真っ先に思ったのは娘のこと。そうよ、真理のお迎えに行かなくちゃ。 「あの、娘が待ってるんです。早く迎えに行ってやらないと」  まぁ落ち着いてという先生の言葉。鎮静剤でも打たれたのだろうか。私は再び眠りに落ちた。次に目を覚ました時にはもう少し意識がハッキリしていた。そうだ、事故に遭ったのだ。仕事が終わり娘の真理を迎えに行こうと信号待ちをしていた時のこと。疲れていたのだろうか、ふらふらと道路に飛び出した私は車と衝突した。 「娘さんはお婆ちゃんの家にいますからね。安心して。先程連絡しましたからすぐに来てくださいますよ」  お婆ちゃん……義母だ。私は眉間に皺を寄せる。真理はあの家にいるのか。白檀の香り漂うあの家に。嗚呼、早く迎えに行かなくちゃ。焦る気持ちと裏腹に私は再び眠りに落ち夢を見た。夫のこと、義両親のこと。……悪夢だ。
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