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序
いなくなればいいのに。あいつも、あいつも、あいつも。
「心配いらないよ。カミサマはちゃんと見ているよ」
カミサマなんかいるわけがない。うそばっかり。
「そうだね、カミサマはいないかもしれないね」
にっこり笑う口元。大きな三日月のような笑顔だ。笑み崩れた細い目。ありふれた顔立ち。
不思議な奴だと思う。不意に思う。ほんとうにこいつのことが好きなんだろうか。トモダチだと言っているけれど、心のどこかでは、いつもこいつのことをーー。
「カミサマはいないかもしれないけれど、かわりにアタシが、仕返しをしてあげる」
仕返し。どんな。
嫌なことをたくさんされてきた。恥ずかしい思いもたくさんしてきた。ちょっとやそっとのことでは追い付かない。
ちょっとケシゴムを隠すとか、上履きを捨てるとか、その程度の仕返しでは足りない。じゃあどんな仕返しなら気持ちがすっきりするのだろう。
そうだな、例えば。
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