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「終わったか……どうやら賭けは負けだな」
俺はポツリと呟いた。
それを間近で聞いていた元妻がその場で泣き崩れた。
金切り声で嗚咽する元妻……
一度は愛した女だが、今は情の欠片すら感じなかった。
俺だって悲しい。
賭けに負けたのだから……
俺は落胆のため息を漏らしながら、スマホを取り出した。
「もしもし。いつも通り仕事を頼みたい。死体袋は一つだけで充分だ」
電話を切ると、元妻は顔を上げていた。
俺はそれを良い事に、頭に拳銃を突きつけた。
「娘を失い、お前も生きる意味を失ったろ?せめてもの情けだ。一発で終わらせてやるよ」
俺は迷うことなく、拳銃の引き金を引いた。
その次の瞬間……
――ガサガサ……
山の入口から微かに音が聞こえた。
最初は小動物だろうと思い、拳銃を元妻から森へと向けた。
ところがすぐ拳銃を下ろした。
音の正体は1人の女だった。
全身真っ赤な血に染まりながら、大怪我をして森から出てきた。
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