オルトロスの賭け

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娘の身体はボロボロだった。 返り血と自身の流れる血が区別できないほど赤く染まっていた。 右頬には熊の爪痕がくっきりと残されてるのがすぐに分かった。 それでも、娘は片腕を抑えてフラフラになりながらも歩いていた。 「瑠惟!」 元妻は大急ぎで、娘の元へと駆けつけ、抱きしめた。 「お母さん……」 娘は枯れた声で母親の愛を受け入れた。 「お涙頂戴か……泣けるねぇ」 「あんた……」 俺に殺意を抱く元妻であるが抱くだけだ。 殺す度胸もないくせに…… そんな中で娘が母親から離れ、俺の元へと近付いた。 「お父さん……私……目が覚めたわ」 あの時の娘の爽やかな笑みは、今でもこの目に焼きついている。 「私……稼業を継ぐわ」 娘の決意を聞いた瞬間、この上ない喜びを感じた。 「素晴らしい!それでこそ俺の娘だっ!」 俺は娘に抱きついた。 「お前は俺の娘だ。殺し屋の血を引いている。お前に俺の技術を全て教えよう。さすればお前は最強の殺し屋へと変身するのだっ!」 「変身?」 「そうだ!そしてやがては裏社会に蔓延る数多の殺し屋共が俺達に平伏すっ!“パイソンキラー”!“ラッキー・ショット”!“幻影の暗殺者”!最強を名乗るどもが俺達に頭を垂れるのだっ!」 俺は声高らかに宣言した。 娘は強くなれる。 そう確信した。 「そうね……み〜んなが平伏す。でも……」 ――グサッ…… 「うっ!」 「あんたの力は必要ない」
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