オルトロスの賭け

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「んっ……ここは……」 依頼人はうとうとと眼を開けた。 「気が付いたようだな」 彼女は完全に眼を開くと視界には俺だけが映っていた。 依頼人は大樹に縛られて身動きが取れなかった。 しかも着ていた制服は無く、下着姿を俺にさらけ出していた。 「ど、どうするの?」 依頼人の質問に俺は答えた。 「死にたいんだろ?だったら死なせてやる。ただし、殺すのは俺ではない」 「えっ?」 俺は奥へと指を差して説明を続けた。 「近くに行った先に熊の洞窟がある。そこにお前の制服を置いてきた。恐らく8割の確率で熊は匂いを嗅ぎつけここにやって来るだろう」 俺の説明を聞き、依頼人は段々と青ざめてきた。 「もし仮に熊が来ずに生き延びたとしても、縄で縛られてある。ここはあまり人が来ないし大声で叫んでも聞こえやしない。熊に食われるか、或いは餓死するか。まぁ、どの道、望み通りに死ぬんだからいいよな」 俺はニヤリとほくそ笑むと後ろを振り返り、黙って去っていった。 「ちょっと待ってよ!ひとおもいに殺しなさいよっ!!」 後ろから女の怒声が聞こえたが無視して山を降りようとしていた。 一歩一歩、俺の背が見えなくなる前に、女は最後に叫んだ。 「待ってよっ!お父さんっ!!」
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