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お父さん……
そう呼ばれたのは久しぶりだ。
俺は立ち止まり、その場で後ろを振り返った。
そこには大樹に縛られていた淫らな我が子がいた。
だが………
「確かに俺には娘がいた。しかし娘は死んだ。妻と共にな」
俺の言葉に娘は絶句し、下に俯いた。
そこに憐れみなど微塵も感じなかった。
寧ろ情けないと思った。
殺し屋の娘なら娘らしく堂々と振舞って欲しかった。
しかし、それには俺にも責任がある。
俺は殺し屋の職業を秘密にして家族を養ってきた。
知っていたのは妻だけ……
しかも妻は常人とは違う考えを持っていた。
普通なら殺し屋稼業の引退を望むものだ。
ところが妻はそれを望まず、寧ろ俺の稼ぎを頼りに浪費三昧の生活をしていた。
高価なショッピングに夜はホスト遊び……
妻は贅沢を楽しみ、最終的に娘もそれに同調した。
よく2人に言われた。
「キモイATMのおっさん」と……
どうやら長年の浪費生活によって妻は俺の正体をすっかりと忘れていた。
稼ぎに感謝せず、さも自分が稼いだかのように振る舞うバカな女達。
そして挙句には若い体育教師に妻と子を奪われる始末……
俺は奴らを処分することにした。
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