オルトロスの賭け

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麓まで降りると俺の車の後ろにもう1台の車を発見した。 そこから1人の中年女性が降りてきた。 女は俺の所へ近付くなり、両手で胸ぐらを掴んだ。 「娘はどこっ!?」 元妻は俺から娘の所在を聞き出そうと詰め寄った。 俺が事前に連絡しておいたのだ。 一緒に娘の最後を見るのも一興だと思ったからだ。 「遅かったな。娘は大樹に縛り付けた。まだ生きてるとは思うが今頃、クマにでも食われてるだろうよ」 そう言って俺は鼻で笑った。 ――バシッ!! 元妻は間髪入れずに、頬を引っぱたいた。 俺を叩いた片手は怒りで震えていた。 しかし、元妻から発せられる怒声には弱々しく感じた。 「この外道っ!よくも……自分の……自分の娘を………」 「娘?ハッ、あれは娘では無い。俺に殺してくれとせがんできた依頼人さ。パパ活で稼いだなけなしの金を持ってきてな」 俺は平然と言ってやった。 元妻は常軌を逸した眼で俺を見ていた。 最早、人を見るような眼ではなかった。 だが、俺の話は終わってはいない。 「言っておくが、もうお前らの不倫なんかとっくの昔に許している」 「えっ?」 「お前達に地獄を味合わせてやったし、間男の体育教師にも再起不能にしてやった」 「それならどうして……」 「これはな、賭けなんだ」
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