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俺が神崎を気になり初めたのは、同じクラスになってからだ。 1年の時は、適度に人と関わっていた。 そして2年になりクラス替えで同じクラスになった。一際目立つ容姿をしていた神崎のことは知っていたが見たのは同じクラスになってからだった。 初めてみた神崎は、いつでも笑顔で騒ぐときは騒いで、怒るときは怒っていた。 あんまり良い印象ではなく、ただの偽善者。と僻んでいた。 しかし、ずっと見ていても何も変わらず誰にでも平等に接する神崎をいつしか偽善者とも思わなくなっていた。 話してみたいが、俺とは世界が違う。わかっていたから、遠巻きに見ていてだんだん気になり始めていた。 ある日、朝早く目が覚めて暇だから寮を出て散歩していた。散歩していても生徒とは一度も合わなかった。 そういえば、神崎は野球部だったなー。って何故かわからないが思ってグラウンドが見える所まで歩くと、グラウンドにはあり得ない人の姿があった。 「‥‥‥‥神崎」 自分でもびっくりするくらい小さな声で呟いていた。 本人を前にして呼んだこともないのに。 神崎は汗かきながら、バットを一生懸命振っていて素振りをしていた。 前に、神崎は野球部の副部長だと名前も知らない生徒に聞いたことがあった。野球が大好きで有名な神崎は、努力家だった。 呆然と立って、その姿を見ていると視線に気づいたのか神崎が近づいてきた。 「おはよ!速水って起きるの早いな~」 「お、おはよ!早いのは神崎じゃーん。朝練してんの?」 「朝練の前の自主練だよ。俺、練習しないと出来ないやつだからさ~。野球を好きな気持ちは誰にも負けたくないし、プレーだって上手くなりたい。みんなから憧れられる存在になりたい。だから、恥ずかしいけど毎日やってるんだ」 神崎は恥ずかしそうに汗を拭きながら話してくれた。 首筋を流れる汗が綺麗過ぎてドキドキが止まらない。 「あ。俺、汗くさいよな!近づいてごめんな」 俺が汗を見てるって気づいたらしく一歩下がって苦笑しながら言ってきた。 俺は無意識に神崎の腕を掴んだ。 「‥‥?」 「‥‥神崎なら、みんなから憧れられる人になれるよ!努力してる神崎なら、絶対大丈夫」 俺は、努力なんてしたことないからわからないけど、神崎ならなれると思った。 でも、びっくりしてる神崎を見て俺が俺らしくもない事言ってると気づいた。俺は焦りながら神崎の腕を離して、気づいたら寮の方向に走っていた。 走ってる時に後ろから、 速水!ありがとう!! と聞こえたが恥ずかしさが勝ってしまって、その言葉に答えられずに去ってしまった。 その日とか、神崎は話しかけようとしていたが俺は避けていた。 これが、俺が神崎の事を気にしてしまう理由だ。
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