12人が本棚に入れています
本棚に追加
⑷
「あのさ、速水。」
さっきの雰囲気と違い、真面目な顔になって真剣に俺を見つめてきた。
その視線でさえ、嬉しいと思いながら神崎を見つめかえした。
「‥‥‥、前にグラウンドで速水と話したとき、あっただろ?」
「うん‥」
神崎が、覚えててくれただけで幸せに感じながら返事を返す。
「あの時の言葉、本当に嬉しかったんだ。自主練してるだけで、先輩とかに陰口言われたりしてた。だから、凄く嬉しかった。ありがとう」
もう薄暗いから、よくわからないけど神崎の顔が真っ赤に見える。嘘だ。ただの錯覚、だよな‥
「‥‥前々から、速水と話してみたかったけれど‥なかなか話しかけられなくて。朝、速水を見つけたときチャンスだ!って思ったんだ。思わず自主練してる理由言ったら、神崎なら出来る。って言われて‥‥凄く嬉しかったんだ。」
神崎はだんだん俯いてしまう。
‥‥‥嘘だ。嘘嘘嘘嘘‥
俺の錯覚だ。
何で、神崎は声が震えてるの?
簡単に期待してしまう俺が嫌だ。
「お礼‥言おうとすると避けられてたし、嫌われたかなって思ったけど今日は話してくれて、嬉しい‥‥。ありがとう」
神崎は、顔を上げながら笑っていた。
涙を目に溜めながら。
そんな神崎の腕を引いて、身長は高いけど細い神崎の身体を抱き締めた。
最初のコメントを投稿しよう!