序章・出会い

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 ゴロゴロと空が鳴り始め、あたりがいっそう暗くなり始めた時、ポツリと僕の額に雨粒が落ちた。  今いる神沙(かさ)市は僕の生まれ故郷だ。中学に上がる直前に隣の未図(みず)市に引っ越してしまったので記憶も曖昧になってしまっていた。知っていることと言えば、人口は過疎傾向にあり、よく雨が降るので傘作りの町として知られている、ということだけだった。    そんな僕が、何故そんな所へ十数年ぶりに戻ってきたかと言うと、卒業論文の作成の為だ。僕は歴史研究のゼミに所属しており、将来的には大学院へ進み博物館で働く夢を持っている。必要な単位は卒論のみだ。
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