魔女の血飛沫

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……… … それから200年後、イギリス。 「ま、待ってくれ!…助けてくれ!」 月夜の晩、街灯ともる夜の街。 1人の男が夜道を走りながら暗闇に叫ぶ。 カツカツと石床をヒールが鳴らす。 「あなた、鼠より遅いじゃない」 真っ赤な大斧をガリガリと引きずる。 こいつで何人目だっけ? 数えるのはとうの昔にやめた。 「ね、鼠?」 「眷属にするには臭いし汚いわ」 「な、なに…?眷属…?誰なんだお前は…」 「私?私はカーミラ」 その言葉を最期に… 「グギュッ…」 汚く鳴いて男の首が飛んだ。 血飛沫が顔にかかる。 「……」 私は真っ赤な血で作られた大斧を見る。 「…汚っ」 黒く汚い返り血で汚れてしまった。 ドレスも汚れたし…また作り直しかぁ…。 「いただきます」 真っ二つになった人間だったものを 掴み、引き裂き、啜り、喰らう。 私は味の違いがわかるようになった。 熊とか狼、鼠はすごく美味しいけど…。 「…まずっ」 人間はすこぶる不味かった。 腐ったドブの味がする。 でもこの味が…堪らない。 怒りに充ちた心が病みつきにさせてくれる。 ねぇ…パパ、ママ。 どこまで殺せば終わる? どこまで喰らえば底につく? どこまで死なせれば… パパとママが死んだ理由がわかる? 「ごちそうさまでした」 一筋の涙とともに、 悲しげなご馳走様が夜の街に響く。 私の深紅の瞳と髪の毛が月明かりに輝いた。
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