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……………
………
…
「と、まぁ…そんなお話」
有門先生が話し終える。
すっかり夜の帳が落ちている。
完全下校の時間は過ぎてしまっていたのか、
保健室の外から人の声1つ聞こえない。
「…悲しいお話ですね」
なんて残酷な話だろうか。
魔女狩りってやっぱり酷い歴史だったんだな。
「その子はどうなったんですか?」
「え?さぁ?知らないわ?」
「えぇ!?」
「そりゃあ昔話だし、現実味ないし…
この話、都市伝説みたいなものよ?」
なんか話ぶりが鬼気迫るものだから
本当にあった話だと思ってしまった。
「…それもそうですね」
というか冷静に考えて
ヴァンパイアなんているはずないか…。
「えぇ、そうよ」
クスクスと彼女が笑う。
本当に可笑しいといった様子だ。
なんだか恥ずかしい。
「…あれ?」
なんとなく指先を見ると、
止血したはずなのにまた血が滲んでいる。
ぱっくりと切れた傷から…
輝くような赤い紅い血が…。
「あ、そう言えば…」
「んー?」
しかし特に気に止めず、
僕が先生を見ていて
気づいたことを口にする。
「先生の髪も瞳も紅色ですよね?」
そう尋ねると先生は深紅の瞳と髪を揺らして…
「あははっ、そうだね」
白く尖った八重歯を覗かせてニヤリと笑った。
「いただきます」
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