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『15~18世紀頃のヨーロッパでは、
キリスト教の衰退を恐れた民衆によって
魔女狩りが勢力的に行われていた。
ヨーロッパ全土で約推定4~6万人が
犠牲となったとされる』
…へぇ、そんなに犠牲になったんだ。
多すぎる…あまりに酷いもんだ…。
放課後の図書室。
僕は世界史の教科書に赤色のマーカーを引き、
ノートに書き写しながらそんなことを思う。
定期考査前で独り、世界史の勉強。
歴史は好きな科目だ。
凄惨な人の歴史を知ることで
そうならないようにと少し気が引き締まる。
ふと窓の外を見つめると、
紫色の夕闇が近づいていた。
もうそろそろ夜の帳が落ちる時間。
「…魔女狩りの単元だけ終わらせるか」
そろそろ完全下校の時間になる。
その前にサクッと終わらせておきたい。
『魔女狩りという名だが、女性だけでなく
対象は男性も多数含まれていた』
へぇ、なるほど…えーっと…
引き締まった心で少し焦り気味に
ページをめくろうとする。
すると…
「痛っ…」
しまった、焦り過ぎた。
「いったー…」
指を見るとまっすぐと血が滲んでいた。
痛みで人差し指の先がヒリヒリする。
夕闇に追いかけられるようにして焦るあまり、
教科書をめくる時に紙で指を切ってしまった。
「…結構血が出てる」
独りごちり指先を見つめる。
マーカーと同じ色の赤い鮮血が一文字に広がる。
思ったよりも血の量が多い。
ぱっくりと切れた指先から
ドクドクと脈打つような感覚と
それに合わせて血が伸びる。
血を見るのは嫌いだ。なんだかゾワゾワする。
「…あのー、そろそろ完全下校の時間だよ」
「あっ」
図書委員の男の人に声をかけられて我に返る。
「あれ、紙で切っちゃった?」
「あー、はい…」
「血、結構出てるね。
保健室に行ったらどう?まだやってると思う」
正直少し切っただけで大したことはなかったが…
「…そうですね。絆創膏だけ貰ってきます」
血が滲む中、夜風に当てられるのも嫌なので、
その人の言うことを素直に聞くようにした。
保健室、久々に入るな。
僕は痛む人差し指を少し浮かせながら、
血がつかないようにして
広げた世界史の勉強道具を片付け始めた。
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