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15世紀、イギリス。
「ママ!見て見て!」
深夜1時、私は1匹の鼠を持ってママに見せた。
「あら、カーミラ。また狩りに行ってたの?」
「うん!私が1人で捕まえたの!」
「ほんとに?凄いわねぇ!」
「えへへ」
じたばたと暴れる鼠のしっぽを持って
私、カーミラはママの褒め言葉に
尖った八重歯を光らせて照れた。
「これ今日のご飯にできる?」
「もちろんよ。ちゃんと血抜きしましょうね」
「わーい!私手伝う!」
パパはお仕事でいないけど、
私が一生懸命とってきた食材で
ママと一緒に夜ご飯を食べる。
私はこの時間が好きだった。
「あのねあのね!梟さんが狙ってたんだけど、
私がバーッと行ってシュビビって!
先に捕まえたの!」
「ふふっ、本当に狩りが上手になったのね。
まだ6歳なのに…偉いわ。
…それより、あんまり山は下りてない?
人里の近くはあまりに危険よ?」
「えへへ…うん!大丈夫だよ!」
ママが愛しそうに私の紅色の髪を撫でる。
私たちは山の奥深くの森で暮らしていた。
少し山を下りると私たちと同じ姿をした
ニンゲンという生き物がいるらしいけど、
私はまだ見た事がなかった。
ママと私、2人で台所に立つ。
ママは手際よく鼠をまな板に乗せて
しっかり押さえつけると、
自分の手を爪で引っ掻いて血を出した。
すると、噴き出した大量の血が
生き物のようにウネウネとうねり、
包丁の形に成って固まった。
「…ママ、すごい」
「ふふっ…カーミラもこれくらい
すぐ出来るようになるわ」
「ほんと!?」
「ええ、ほんとよ?
あなたは血の操作が上手だから」
私は自分の手を傷つけて
ママの真似をしてやってみる。
キッと傷つけた手のひらは少し痛かったが、
噴き出す血を見様見真似で動かそうと
体全体に力を入れる。
その力に応えるかのように
血が蠢いて小さな包丁の形に変わった。
その速度はママより遥かに遅かったけど、
形はママのとほとんど遜色なかった。
「できたできた!」
「本当にカーミラは上手ね…」
私たちは能力で血液を自由に
固めたり伸ばしたりすることが出来る。
鋼のように固くも、布のように柔らかくも。
ママから教わった通りにやったけど、
どうやら私は少しセンスがあるみたい。
「6歳でもう、立派なヴァンパイアだわ」
「えへへー」
…そう、私たちはヴァンパイア。
生き血を啜り、人里から離れて暮らす
吸血鬼という一族だった。
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