料理人見習い・ユーリの場合

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料理人見習い・ユーリの場合

 「やぁ、今日もおいしそうだね」  レンがオレの作った塩焼きを前に言った。我らがリーダーは本当にブレずに規律を保っている。  誰が指名したわけでなく、レンからリーダーを立候補して、いまの日々が続いている。 「ね、ユーリ。もう少しだけ塩かけたい」 「はいよ」  サキの求めに応じて、塩の入った瓶を軽く投げて渡した。「ありがと」とその瓶を受け取るとサキは塩を振った。  この島ではオレが料理を担当している、と言ったら何だか偉そうだがオレは船の上では見習いだ。ただしオレをこき使っていたあの料理番は嵐の中でどこかに消えてしまった。筆頭弟子とかコックの中でも階級みたいなものがあったが、ここではそんなことが関係ない。  そんなオレがここでは料理担当だ。まともに包丁を扱えない女たちよりもオレは優遇されている。 『食がなければ生きていけない』  レンの方針で、オレは見張りを免除されて、日々の食事を考えている。  
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